「いざというとき戦争に行かない外国人は準会員」。これは阿部孝夫現川崎市長の言葉だ。
この言葉を逆から考えてみたい。外国人(定住外国人も含むということだが)が準会員なのであれば当然日本人は正会員ということだろう。
いろいろなところでわたしは自分の考えを表明してきているが、わたしにとって、こういう「単純二分法」ほどかみつきたくなる論法はない。阿部市長の言い分ではわたしは否応なく「日本人=正会員」に組み込まれることになる。そうなると、わたしは否応なく彼の定義の前半にも引きずられることになるのだ。つまり「外国人=戦争に行かない」の逆、「日本人=戦争に行く」の中に組み込まれる。単純二分法とは白か黒か、表か裏か、二つに一つしかない。それ以外という選択肢はない。
ということは、「戦争に行かない日本人」というカテゴリーはあり得ないということだ。わたしは喜んでそのカテゴリーに入ろう。だが、阿部氏のカテゴリーにはない。そうであれば、わたしも安心して所属できるカテゴリーを阿部氏に基本姿勢を変えてでも作ってもらうか、そうでなければこういう市長には辞めていただくほかない。
「中央の小泉、川崎の阿部」。ワンセンテンス・ポリティクスをうまく使ったつもりのお二人。だが、ワンセンテンスは決して政治をわかりやすくしたのではない。劇場化しただけだ。そしてその劇場の聴衆は、やがてもっと確実なものへと目を向けるようになる。大衆は馬鹿ではない。単純二分法やワンセンテンスを武器にする者たちは、やがて大衆から疎まれる。「現実」とはそれほどには単純ではないからだ。
大衆を支配しようとする者たちは、あの手この手を使う。だが被支配者は選挙という「最悪を避ける」力を行使して反撃する。川崎は今がその時。