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No.539 見くびっちゃイカンね

エッセイ「多摩川べりから」
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 暑い季節になると、野球が盛り上がる。高校野球は各地で地方大会が開かれ、たくさんのドラマが生まれている。テレビを賑わせる“超高校級”の球児の活躍もまぁたいしたものだが、先ず全国ネットになど絶対に登場しない弱小チームのこの夏の奮闘も、当事者にとっては間違いなく確かにドラマだ。
 我が家はプロ野球横浜DeNAベイスターズのファンなのだが、川崎に越してきた当初は万年最下位が定位置という状態だった。スタンドにも空席が目立ち、それこそいつでも観戦できたので、子どもたちを連れて横浜スタジアムに出かけた。だが、今ではAクラス(6チーム中上位三位を指す)入りを果たし(22日現在)、スタジアムはファンクラブでさえ入場が難しいほど連日満員御礼状態。少ないテレビ中継をリビングで見るのが当たり前になった。
 このチームの背番号3は梶谷隆幸外野手。彼の姿を試合中に見たらたいていの人は「やる気が無いんじゃないの?」と思うだろう。本人も軽く言う、「ま、やる気ない系なんで…」。その一つが空振りの多さ。球界ワースト1だ。だが、そこにはプロ11年をかけてたどり着いた梶谷選手の打撃のスタイルがある。チャンスに空振り、ファンとしては「やる気あるのか!」とつい思ってしまうし、それだけ期待していることの裏返しでもあるのだが、表面だけでは計り知れない部分を持っていてこその“プロ”、そして梶谷選手は確かにプロだ。
 プロを名乗る以上、そういうものかも知れない。結果がすべてのプロスポーツの世界で生き残り続けられるということがそれを証明している。実際三振も確かに多いが、見事な一打をそれこそ何本も生んでいるのも事実なのだ。
 人は見かけによらないのは、本当はプロスポーツ選手だけのことではないはず。本当は人間誰もがそうなのだ。無名の地方高校球児の取り上げられることのないドラマがそうであるように。他者の人生は、生きているというただそれだけで充分敬意に値する。簡単に見くびられてしまいもするが…。
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