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No.544 漫画でたどる引揚げ

エッセイ「多摩川べりから」
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 先日、思い立って「漫画でたどる引揚げ展」に出かけてきた。Facebookにこのチラシがアップされていて、是非見て見たいと思っていたのだ。
 会場は西新宿にある住友ビル(少年の頃は住友三角ビルと呼んでいた)の中にある「平和祈念展示資料館」。総務省の委託を受けてつくられた展示館で、「さきの大戦における、兵士、戦後強制抑留者および海外からの引揚者の労苦について、国民のより一層の理解を深めてもらうため、関係者の労苦を物語る様々な実物資料、グラフィック、映像、ジオラマなどを戦争体験のない世代にもわかりやすく展示」(HPより)しているという。静かな館内だったが常時数名の来館者がいたし、夏休みの研究だろうか小学生連れの家族や女子高生のグループなどもいた。資料館は「労苦」に焦点が当てられているので、その点では話しとしては聞いたことがあることのいくつかの現実に触れて、軽い衝撃を受けた。ただ、戦争そのものに対する賛否は当然表面には表されていない。その点については資料館そのものの評価は割れそうだ。
 引揚げに関わった漫画家は赤塚不二夫、山口太一、古谷三敏、横山孝雄、高井研一郎、ちばてつや、森田拳次、山内ジョージ、バロン吉元、北見けんいち、林静一。それぞれが外地での思い出を漫画で描き、それにまつわる一言が添えられていた。労苦のただ中の経験を、しかし少年の目を通して見つめているもの。辛さ悲しさ厳しさの中にも少年らしい面白さや可笑しさがあって、それゆえに逆に労苦がリアルに響いてきた。こういう経験が彼らの創作活動の裏にあったのだと今回初めて知り、改めて彼らの作品に触れたいと思わされた。
 それにしても新宿は日々変化する街だ。住友三角ビルも現在大改装中で入り口がなかなか見つけられず酷暑の中ビルの周辺をずいぶん歩かされた。だが、そんな時に昔からそのままのものを発見して、とても癒されるのだった。
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