岩国市長選挙は、わたしたちにとっては極めて残念な結果となった。厚木艦載機部隊の岩国基地への配備に反対してきた井原前市長は僅か1,800票余りの差で敗れてしまった。代わりに市長となった福田氏は早速石破防衛大臣、高村外務大臣などを訪問し、新市庁舎建設途中で突如止められてしまった補助金の復活を約束させたらしい。「国の言いなりにはならない」といった公約が今後どれだけ守られるのか、引き続き岩国を注目していきたい。
今回の選挙を通して考えさせられたことは、「しかたない」という感情だった。岩国市民は移駐には不安を覚えつつ、しかし市庁舎の建設がストップしてしまっている現実に、先行きの不安を感じたのだろう。そこで「しかたなく」福田候補に投票した人のほうが若干多かった、というのが結果だった。出口調査などでも「移駐には反対だが…」という人が8割程度だったという。当の福田氏もそのことは判っているからこそ、「国の言いなりにはならない」と言わざるを得なかったのだろう。
何事につけ判断が迫られる時、わたしたちはこの「しかたない」という感覚に支配されることを否めない。岩国市長選挙の結果は残念だったが、市民が「しかたない」と判断したことを、非当事者の立場から評論は出来ないし、ましてや非難などしてはならないことだ。わたしたちにできることは、悲嘆の中で、しかし未来を諦めずに今、この瞬間も岩国で体を張っている人たちと、少なくとも意識の上で連帯し続けることではないだろうか。「忘れない」ことだ。
わたしたちには選び取ることができる。およそ主権者たることをことごとく踏みにじられるこの国の中にあってはなおさら、「選び取る」という究極の砦を、いつも意識していたいと願う。