川崎市議会は予想以上に魑魅魍魎の世界だった。
無防備条例制定の直接請求に関して市長は「3万という数字を多いと見るか少ないと見るかの評価は分かれる」だの「3万を超える署名者の中には、条例の中味まで知らない者も多い」だのと堂々と本会議場で答弁する。法律に則った手続きで、しかも氏名はおろか生年月日や住所、その上捺印までするハードルの高い署名に応じてくれた市民を愚弄する発言ではないか。議会というものの性質上、代表質問はあらかじめ質問趣意書が提出され、それに対する答弁書も用意されて、本会議はいわばセレモニーに過ぎないのだが、せっかく請求代表者が5人も意見陳述したのに、そこで述べられた意見について質問するでもなく答弁するでもない。一体わたしたちはなんのために時間を割いて登壇したのか、それさえも疑わせるものだった。加えて市民委員会での実質審議も、条例はおろか条例の根拠になっているジュネーブ条約もよくわかっていない議員があることないこと想像でだけものを言い、答える市の行政当局もまた似たりよったりのレベルで、結局最初に結論ありきの出来レースを、約1,000万の経費をかけて無駄にしただけで終わってしまった。もう少し内容のある論議を期待したのだが、それは無理な願望だった。
そうそう、議会で意見を陳述する者は本会議場では背広にネクタイを着用しなければならない。その分冷房を強くして暑くないようにしているらしい。それが議会の品位なのだとか。一方各種委員会の場では委員にドレスコードはない。ご多分に洩れず市民委員会もクールビズ。してみるに、議会とはそういう場なのだ、ということだろう。市民の暮らしとか感覚とは別の世界。まるで劇場のような、無意味な場であるくせに権力は発揮される場。その場でわたしたち5人は意見を聴取するというアリバイのために担ぎ出されたに過ぎないということだったのだ。徒労という言葉は正にこのためにある。