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No.198 何を守り何を渡す

エッセイ「多摩川べりから」
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 今年はカレンダーの関係でいわゆる正月休みが少ないという。元日が土曜日だったので、カレンダー通りに4日から出勤となった人たちにとっては確かにそうかもしれない。  今年も地区の新年礼拝に出席するために元日の午後から外出した。昨年まではそんなことはなかったように記憶しているのだが、川崎駅周辺のショッピングセンターはどこも営業していた。あちこちから福袋を手にした大勢の買い物客が吐き出されてくる。  一つのビルにはその会社の店舗だけでなく様々なテナント店が入っている。ビルが元日から営業するなら、テナントも開店しなければならないのだろう。休日が少ないどころか、7連勤、9連勤という話も聞こえてきた。  他の人と同じことをしていてはチャンスが失われるのだろうし、競争によって成長が興るのだろうから元日営業も無意味とは思わないが、なんだか急に冷え込んだ空模様以上に寒々とした思いが胸に沈み込んだ。ここで働いている一人ひとりにも家族があるだろう。その家族は、平日と同じように出勤してゆく人をどのような思いで見送ったのだろう。そんな切なさはとうに振り切ってのこととは思う。だがやはり心はそこに戻って来るのだ。  「どうして1位でなければならないのですか。2位ではだめなのでしょうか。」嘲笑を持って語られる某大臣のことばなのだが、これは本当に笑われるたぐいのことだろうか。成長にのみ正義はあるのだろうか。様々なものを失ってでも伸びなければならないものとはいったいなんだろう。それは本当に必要なものなのだろうか。  握った手を開かなければ、握手することはできない。抱えきれない荷物をひととき降ろさなければ、大事なものを抱くことはできない。何を守り何を渡すのか、見極めながら歩んでみたいこの年。
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