ようこそ、川崎教会へ

No.213 エスカレーターが止まった街で

エッセイ「多摩川べりから」
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 3・11の震災後、恐らく節電のためだろう、駅前の歩行者用デッキや地下商店街等でのエスカレーターが使用禁止になっている。  今から20数年前、夏期伝道実習で仙台駅に降り立った。新幹線コンコースは3階。改札を抜けて一つステージをおりると、駅舎の前には青葉通りや定禅寺通りという有名な通りへと続く広い歩行者用デッキが続いていた。それらと通りとを結ぶ接点は階段だった。それを唱してある教会員が「仙台は健康な者しか住んではならない、という意味ですよ」と笑って話しておられたことが印象に残っている。  その時と同じ風景が、震災を契機に川崎の町にも現れ出したのだ。  何でも川崎駅東口の地下商店街「アゼリア」は、日本一を争う大きな地下商店街らしい。だいたい地下2階あたりの深さになる。市役所通りや新川橋通りに出るにはいくつかの階段しかない出入り口の他、通り専用に上りのエスカレーターが用意されている。駅への出入りは上り・下りが動いていた。だがその全てが一斉に止まった。「健康な者」にとっても結構辛い上り下り。お年寄りは一歩一歩辛そうに途中立ち止まりながら往来している。  恐らくスタンダードというのは健常者基準なのだろう。ハンデを背負っている人、社会的弱者と呼ばれる人たちが基準になることはないのだろう。猫も杓子も「ユニバーサルデザイン」と叫んでいた頃が懐かしい。結局、ブームはブームでしかなかった。ひとたび震災などが起こったら、ブームは消し飛び、意味があるかどうか考えもしない自粛に突っ走る。そうやって弱い人にさらにしわ寄せが来るこの社会の仕組みは、一体何なのだろう。  今感じるいくつもの矛盾を、忘れないでいよう。ここに現れている一つひとつの矛盾が解決されることこそユニバーサル・デザインのはず。いろいろな人が本当に住みやすくなる社会を目指すために、しっかり覚えておこう。
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