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No.231 北の空で

エッセイ「多摩川べりから」
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 話題になって久しい北海道・旭川にある旭山動物園に行ってきた。動物の生態展示に工夫を凝らして一躍有名になったあの動物園である。  当日は突然の豪雨にもかかわらず、何台もの観光バスや自家用車が駐車場いっぱいに溢れていた。北海道の小・中学校は既に夏休みが終わっていたのだからそれほどでもないだろう…などというのは甘い予測だった。  パンフレットに「動くから、動物」と大きく書かれていた通り、一つひとつの展示が本当に工夫されていて、しかもそれを信じられないほど間近で眺めることが出来るのは新鮮だった。  特に考えさせられた展示があった。シンリンオオカミを展示する「オオカミの森」、そこに描かれていたエゾオオカミの物語を綴ったあべ弘士氏の壁画である。かつて北海道の大地に暮らしていたエゾオオカミは、野生のエゾシカなどを集団で狩って暮らしていた。人間と目的を近くするゆえにエゾオオカミは絶滅にまで追い込まれる。その結果今ではエゾシカが北海道に溢れ、害獣指定される。壁画は「シカを害獣にしたのは誰か?」と問う。そのオオカミの森を出ると隣が「エゾシカの森」。金網を隔ててオオカミとシカがにらみ合う場面もあるらしい。そのエゾシカの森には畑が設えてあり、職員や来場者が様々な作物を育てている。シカの食害は農作物だけに限定して全道で年間30億に上る。オオカミ、シカ、そしてシカと人間の共存。様々なことをこの二つの森を巡るだけで考えさせられるのだった。  夜、車は石北峠を走る。遠くでヘッドライトに反射した赤い点々が動く。速度を落とすと歩道の上をキタキツネが走っている。豊かな自然が息づいていることを感じた。しかしそれが地球の目で見て本当に幸せなことなのかどうか。答えは単純ではないと思わされた。  頭上には満天の星。悠久の光がわたしたちに問いかけている。
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