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No.250 12月30日が消えた国

エッセイ「多摩川べりから」
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 南太平洋のサモアに昨年12月30日は無かった。  これは日付変更線を地図上で見ればサモアの西側から東側に変更したためにまる1日分が消えてなくなったもの。これによってサモアは「日付が変わるのが世界でいちばん早い国」のひとつになった。  テレビでも報じられて、一日が消えてしまったことが「未来へのタイムスリップ」だと“おもしろい”ニュースとして伝わった。そのニュースの最後に一言「貿易相手国としてのオーストラリアなどと時差を解消することで利益があると判断した」と伝えられたが、本来ならそれはもっと注目されるべき理由ではなかっただろうか。  サモアが自国の標準時を東側の時間帯に設定したのは1892年だという。当時世界の覇権が英国から米国に移り変わり、サモアの地勢から見て自国の標準時を米国に近づけ対米強化する方が有利と判断したのだ。それから120年を経て、サモアはいわば米国を見限ったということだろう。オーストラリア・ニュージーランドは言うに及ばず、アジア地域に近づくことを選択/宣言したことになる。  日本の外交戦略に慣らされてしまった者から見たら、ずいぶん思い切った国策の変更に見える。我が国の為政者を始め国民の大多数も、「米国を見限る」ことなど金輪際出来ないだろうし、思考もしないのではなかろうか。しかし、である。GDP一人あたりの金額が日本の17%を切る小国サモアが、複雑な背景があるとしてもこういった驚くべき選択をなしえる時代になったのは事実であり、一方わたしたちは旧態然とした体制から自由になれないでいることもまた事実なのではないか。  自主・独立とは一体何だろう。世界の趨勢に変化が起ころうとしている今、自分が立っている足下を良く見つめるよう促されている気がしてならない。
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