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No.297 晩秋に

エッセイ「多摩川べりから」
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 梅﨑副園長の小品展が一ヶ月のロングランを終えた。秋から晩秋へと移り変わるひと月をかねこふぁ〜むの喫茶室「アトリエ」で過ごした絵たち。無事に大役を果たした彼女たちを梅﨑邸に引き取って帰ってきた。  幼稚園の遠足下見で舞岡公園に出かけた時には、「いい場所だけど、ちょっと遠いかな」程度の思いしか浮かばなかった。遠足の最後に梅もぎをさせていただき、すっかりお世話になったかねこふぁ〜むさんと、その後こんなにも深いお付きあいなるとは予想も出来なかった。不思議なものでつき合いが深まると「遠い」という思いはしなくなる。この一ヶ月、幼稚園の園児たち、その家族たちも大勢アトリエに押しかけたようだ。彼らもここに足を運ぶことを「遠い」とは思わなかっただろう。考えてみれば、遠近とは単なる物理的な距離ではなく、心の距離なのだ。  先週、インターネットのFacebookで仲間たちが盛んにシェアしている写真がある。白い大型犬がこちら側に背中を向けて夕焼けに染まる海岸に佇んでいる。逆光の中で黄昏れる背中がなかなか素敵だ。そのコメントの中に「思えば遠くへ来たもんだ」というのがあった。妙に画面にぴったりで、思わずにやけた。武田鉄矢作詞、海援隊が歌った歌。あの歌詞のスタートは14歳。20歳を経由して今は女房子ども持ちになった自分が、あの14歳の家出を懐かしく思い起こし歌うわけだ。故郷を離れたから「遠くへ」でもあるし、時間が経ったから「遠くへ」でもあろう。だが実は、心がずいぶんと離れたから「遠くへ」なのだ。心が離れてしまった自分にハッとして、14歳の家出を思い起こしもう一度故郷にまず心を繋げようとした歌なのではないだろうか。  かねこふぁ〜むが近くなったのは、距離も心もさることながら、その風景に「思えば…」という感情が湧くからでもある。そして幼稚園は卒園者たちに「思えば…」と懐かしんでもらえて初めて完結する、そんな気がしたのだ。
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