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No.434 7・16議事堂前

エッセイ「多摩川べりから」
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 安保法案が特別委員会を通過した16日。可決から5時間後、議事堂周辺には大勢の人が詰め掛けていた。その時間で2万5千。だが周辺の地下鉄駅から「反対の人たちがどんどんわいてきています」とマイクが叫ぶ。午後8時には6万人を超えた。
 議事堂正面は身動きが取れなかった。向こうの正門側の歩道はガラガラ。ふと見ると、南アジア出身らしい若夫婦が、二人の赤ちゃんを、一人は背負い一人は抱っこして立っている。たまたまそこに居合わせたのではあまりにも気の毒だ。連れ合いが気付いて目の前のおまわりさんに「赤ちゃんを向こうに渡らせてくれ」と申し出るが強硬に阻止された。
 すると若い外国人夫婦は「私たちは大丈夫です、ありがとう」と言い、さらに警官に向かって「あなたたちはこの大勢の人たちの声をどう聞くのですか。私は神さまからいただいた(この子の)いのちを戦争で失いたくない」と言って抱っこしていた1歳を少し超えたくらいの赤ちゃんを高々と抱え上げ、「ほら、あなたも『センソウハンタイ』って声を挙げて」。赤ちゃんはにっこり微笑み、その笑顔は、その場に居合わせた大勢の人の心を一瞬にして和ませてくれた。
 どういう理由なのかわからない。だが彼らはたまたまそこに居合わせた人ではなかった。それどころかあの夫婦は外国人でありながらこの国の行く末を心から案じてくれていたのだ。いのちは与えられたもの、だからこそそれは大切だし大切にしなければならない、と。だが議事堂の中の人たちは、悲しいかなそれとは別の論理があって、国民をそっちに引っ張ろうとする。
 彼らを選んだのは私たち。そして私だって思いがぶれないとは限らない。だから、あの夫婦、あの家族のことを覚えておこう。あなたたちのおかげで本当に大切なことをストレートに口にする大切さを教えられたのだと。
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