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No.516 不安を感じさせ続けるくに

エッセイ「多摩川べりから」
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 内閣府が行っている「国民生活に関する世論調査」というのがある。現在の生活、今後の生活などについて概ね満足度などを調査するものだ。最新は2016年8月の調査。
 報告書は内閣府のホームページで詳しく見ることが出来る。面白いのは生活の全般についてほぼ満足が不満を上回って、時系列から見ても昭和38年以来ずっと現在の生活に満足しているものの割合が高いのだが、相反して資産や貯蓄の面では一貫して不満の割合が高く、また悩みや不安を感じている割合も一貫して感じていない者を大きく引き離している。衣食住に関して満足しつつ、しかし特に老後の生活設計や自分の健康に関して常に不安を感じ続けているのが、平均的なニッポン人という姿が浮き彫りになっている。
 先日ある人の話を聞いた。彼は「生活に満足しているという答えと、将来に不安があるという答えは、決して矛盾ではない」という。将来に対して不安な者は、現在の状態に満足するしかないのだ、と。なるほど、と思った。一昔前には「野心」という言葉が確かに存在した。野心を持つ者は現状に満足なんかしない。現状を打破しようとする。「野心」というと何だがダークなイメージだが「夢」とほぼ同義語ではないか。今より暮らしを良くしよう、経済的なことはもとより、不安を感じないで日々を暮らせるような「良いもの」に向かって、現状を乗り越えていこうという者は、むしろ未来に向かって明るい夢や希望を抱いている。だが現実は6人に一人が貧困。しかも放置。
 「夢を持て」「絶対叶う」「諦めない」みたいなキーワードを見ない日はない。テレビでも雑誌でも、なんだか励まされっぱなし。でも、挙って何かを明示する時は、大体がその裏にある事実を隠そうとする力が動いている証拠でもある。そんな時は静かにしかし力強く「お構いなく」と言いたい。そして、「隠しておきたいのは、あんたの方だろう」、と。
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