エキサイトブログ


No.138 銃乱射事件のその後

 先週この欄で書いた米国テキサス州の陸軍基地で起きた銃乱射事件について、先週の時点では「銃に悩むアメリカ」の一面としか感じられなかったのだが、どうやらもう一つ複雑な事情を抱えているようだ。
 13人を殺害したのは、陸軍少佐で軍医のニダル・マリク・ハサン容疑者。ハサン容疑者は幼い頃からのイスラム教徒だったようで、両親はパレスチナからの移民だったという。9.11以後、同僚の兵士らに「イスラム教徒である」ということを理由に嫌がらせを受けていた。また容疑者は職場でイラクやアフガニスタンでの米国の戦争を批判し、同僚らと口論となったこともあったらしい。そういう事情もあってのことか、彼は除隊を望んでいたが、軍に精神科医が不足しているという理由で受理されなかった。
 また、容疑者はアルカイダを支援するイスラム教聖職者と接触していたことをCIAが事件前にFBIに伝えていたという報道もあった。
 容疑者は軍法会議にかけられ、有罪が確定すると死刑判決を受ける可能性があるらしい。だが、これらの報道に接すると、もちろん単独の犯行ではあるのだが、とても複雑な要因が絡み合って引き起こされているように思える。そしてその複雑さは、とりもなおさず現代アメリカの抱えている複雑さそのものなのではないだろうか。
 移民でありイスラム教徒である両親が反対したにもかかわらず、国への忠誠を表明するために入隊した軍で差別や嫌がらせを受け、信仰や信念と相反する現実の前に苦悩しつつ、手に入れやすい銃で1,000発も乱射した。決して単純な乱射事件ではない。
  「どうしてみんなから憎まれるの?神さまから愛されていると思ったのに、どうして?」と絶句するカラードの少女。対話の相手はオバマ大統領。映像の中の少女の目が、この事件の複雑さをもまさに表しているように見えた。